卒業者代表答辞
寒さも和らぎ始め、花々の芽吹きが新たな季節の到来を告げる頃となりました。コロナウイルスの影響で卒業式は中止になってしまい大変残念ですが、このことは私たち卒業生が健康体で新たな門出を迎えるために必要なことだったと思います。熟考の末、苦渋の決断を下された方々に御礼申し上げます。
さて、式は中止になりましたが、私たちが今日、令和二年三月二十四日に卒業するという事実は変わりません。これに対して祝いの場を設けようと取り計らって下さった方々、そして書面ではありますが暖かい餞の言葉を送って下さった原田学長と在校生代表に卒業生一同感謝の念でいっぱいです。
まず、今まで親切にご指導して下さった先生方、事務的な面で支えて下さった職員の方々や地域の方々、身近な存在でありながら指導や刺激を与えて下さった先輩方、ともに多くの時間を共有したかけがえのない友人や後輩、そして今までずっと私たちを暖かく見守り、様々な面で支えて下さった家族に卒業生一同心より御礼申し上げます。
振り返ってみますと、熊本大学に入学してからのこの四年間は瞬く間に過ぎてしまったような気がします。私たちの代は、入学後間もなく熊本地震に見舞われました。数週間不自由な生活を強いられる中で、普段の生活がいかに尊いものであるかということを考えさせられました。また、実際に地震の恐怖にさらされたことで、その後の災害に対して当事者としての意識をもつことができるようになり、防災意識が高まりました。失ったものは多く有りましたが、決して忘れてはいけない経験だったと思います。
大学生活では、様々な先生方や先輩方にご指導を受け、多くの知恵を蓄えることが出来ました。時間を割いて指導して下さったことには誠に感謝しております。また、友人との議論や協力が時には行事の成功を導き、時には私たちに学問上の深い理解をもたらしました。これらの経験はこれから直面する様々な課題を解決していくための糧になると思っています。
さて、今日という卒業の日を迎え、これから私たち卒業生は各々が選んだ道へ進んで行くことになります。その進路において、新たな価値を生みだす形で、社会貢献をしていく義務が私たちにはあると感じています。この義務を果たすためには熊本大学で培った力を駆使して目の前の問題を一つずつ解決していくことが不可欠です。しかし、昨今の未解決問題には一つの専門分野内で収まるものは少なく、様々な分野の知恵や視座が有効に働く場合が多いと聞いています。この現状の中で私たちが活躍するために出来ることの一つは、既に知っていることに関しては更に理解を深めたり多角的な視点を獲得したりするために、そして知らないことに関しては自分のツールを増やすという目的をもって、絶えず学ぶことに時間を割くことだと思います。また、学びで得たものは問題解決に直接役に立たなくても、人生を何倍も豊かにしてくれるはずですから、楽しんで学び続け、様々な形で社会に価値を還元するべくこれからも励んで行きたいと思っています。
最後に改めて四年間私たちを支えてくださった方々すべてに卒業生一同心より御礼申し上げます。有意義な大学生活を送らせて頂いたこの熊本大学の更なる発展と、私たちの後輩がさらに学問に専念できる環境が整っていくことを祈念いたしまして、卒業生総代の答辞とさせていただきます。
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令和二年三月二十四日
熊本大学第六十八回卒業生総代
理学部 竹下 雄輔