数理モデルを用いてゼブラフィッシュ縞模様形成の分子レベルのしくみを部分的に説明
【ポイント】
- 以前作った模様形成の数理モデルを再解釈して、その後の10年間で明らかになった分子レベルの機構を説明。
- 数理モデルを用いてシミュレーションすることで、コネキシン分子が模様づくりへどのように影響しているのかを予測した。
- 理論的な予測と実際に遺伝子組み換え実験で得られた魚の模様を比較したところ完全には一致しなかったが、この模様形成に関する理解が深まった。
【概要説明】
コネキシンと呼ばれる分子に変異が起こると魚の皮膚の縞模様が斑点になることから、コネキシンは模様をつくる際に重要な働きをしているだろうと指摘されていました。しかし、模様づくりにどのように影響するのかはよくわかっていませんでした。そこで、熊本大学国際先端科学技術研究機構の中益朗子特任助教は、数理モデルを用いて、コネキシンがゼブラフィッシュの皮膚の模様形成にどのように影響するのかを予測しました。その結果、コネキシンの遺伝子組み換え実験で得られた実際の魚の模様は、予測との完全な一致は見られませんでしたが、予測された特徴が含まれていることがわかりました。本研究成果は、令和4年1月18日にオンライン科学雑誌「Frontiers in Physics」に掲載されました。
【展開】
新しい数理モデルは新しい顕微鏡のように、それまで見えなかったものを明らかにする力があると考えています。「それまでに積み重ねられてきた実験データ」と「現象に見られる共通性を説明する理論的な枠組み」に基づいて、よりもっともらしい可能性を提案することができます。それによって、直接的には理解しにくい物事の関連性を指摘できることがあります。
今回、理論的な提唱に端を発し実験による検証が続けられてきた「魚の模様」というひとつのパターン形成現象への理解が深まりました。この結果は、さらにこの模様形成の予測や操作へとつながる可能性があります。また、モデルによって指摘されたデータの不一致が何に起因するのか、今後明らかになっていくものと思われます。
【論文情報】
論文名:Correspondences between parameters in a reaction-diffusion model and connexin functions during zebrafish stripe formation.
著者:Akiko M. Nakamasu
掲載誌:Frontiers in Physics
doi:10.3389/fphy.2021.805659
URL:https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fphy.2021.805659/abstract
【詳細】
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お問い合わせ熊本大学国際先端科学技術研究機構(IROAST)
担当:特任助教 中益朗子
電話:096-342-3405
e-mail: nakamasu※kumamoto-u.ac.jp
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